厚生労働省は毎年、「個別労働紛争解決制度」の施行状況を公表しており、そのうちの「総合労働相談」の件数は、ここ数年100万件を超えております。
これは毎日2,700人以上の人が、今の勤務先の働き方に不満を持ち、相談に行っていることになります。
内訳として、1位:いじめ・嫌がらせ、2位:解雇、3位:自己都合退職、4位:労働条件の引き下げとなっております。
今はネットで簡単に検索できるため、労働者にとって有利な点を勉強していることも多く、不満があればすぐに会社を訴えることが多くなってきているように感じます。いきなり、弁護士から内容証明郵便で訴えがきたら、オーナー様はどう対応するか、考えたことがあるでしょうか?
10人以上の事務所は就業規則の作成と労働基準監督署への提出が必要です。
労働者を守る法律は、労働基準法他たくさんありますが、経営者=オーナーを守る法律は残念ながらほとんどありません。オーナーを守ってくれるのは就業規則といっても過言ではなく、労務トラブルにおいても、裁判所では就業規則に何が書いてあるのか、確認されます。それだけ就業規則は大事なものです。
オーナー様からよくある相談に、「使えないから解雇したい」「レジの売上を盗んでいるのがわかったがどうしたらいいか」「女子スタッフにセクハラしている社員がいる。サロンとしてどう対応していくか」等あります。
最高裁では、使用者(オーナー様)が労働者(スタッフ)に対する懲戒権を取得するための要件で「就業規則に懲戒の種別と事由を規定すること」と述べています。懲戒処分をするのには、就業規則が必要になってきます。
よくあるケースは友人からもらった、本で見て自分で作ったというサロンも目にする機会がありますが、労働法を理解してサロンにあったオリジナルのものと、どこでも通用するような一般的なものとでは、どちらがオーナーを守ってくれるのでしょうか?
せっかく就業規則を作るのであれば、専門家の社会保険労務士に相談してサロンにあった就業規則を作成してみてはいかがでしょうか。
また、就業規則を作ることは、働くルールを明確にすることになりますので、スタッフも安心して働ける環境を作ることにもつながります。
スタッフの離職率低下や勤続年数の増加にもつながると思います。
就業規則は労働基準法により、常時10人以上の従業員がいる事業所は就業規則の作成義務があり、労働基準監督署へ届け出が必要です。就業規則の作成義務があるのに作成しない、届出をしない等の場合は、罰則もありますので注意が必要です。
就業規則のポイント
労務トラブルの原因になりやすい、賃金や退職・解雇・休職等の事項については、より細かくサロンの実態にあった内容の記載をする必要があります。未払い残業代請求も多くなってきております。始業・終業時間は何時で休憩は何時間なのか、休日は何日あるのか、それが労働基準法に合っているのか等、今現在のお持ちの就業規則の内容で大丈夫かどうか、この機会に見直しをしてみるのもいいのかもしれません。
労務トラブル防止のためのチェックリスト
最近、サロンでのトラブル案件が増えてきています。弁護士の先生とも情報交換して感じるのは、トラブルが発生してから対応するのでは手遅れのケースが多いので、トラブルになる前に未然に防ぐことができるよう、いかに準備するかが大事になってきていると感じています。チェックリストをつけておきますので、参考に点検してください。
- 採用時に業務内容を記載した雇用契約書を交付し、誓約書をもらっていますか?
- 退職合意書の書式を準備していますか?
- 始業前の朝礼・掃除はどのような扱いになっていますか?
- 長期の無断欠勤の扱いを就業規則に規定していますか?
- 休職の期間は適切ですか?
- 復職の可否の判断は会社がすると決めていますか?
- 配置転換やお店の異動があることを就業規則や雇用契約書に記載していますか?
- 有給休暇の申請方法について、就業規則にルールとして記載していますか?
- アシスタントのレッスン時間の対応はきちんとできていますか?
最後に・・・
就業規則は作ったけど、オーナーの机の中にしまっている、そんなことはありませんか。就業規則を作成したら、スタッフに周知しないといけません。
また、就業規則に記載してある内容の通りに運用されているでしょうか。実際の運用と就業規則の中身がずれていないか確認してみてください。就業規則は作成したら終わりでなく、その後の運用が大事です。
働き方改革関連法が今年の6月に可決されました。
時間外労働の上限規制や年次有給の取得義務化等の対応が今後求められてきます。働き方改革関連法に適した就業規則の見直しも必要かもしれません。今後の法改正情報への対応もますます大事になってきます。
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